標準レベルの参考書で東大入試は突破可能?
日本の"最高学府"とも呼ばれる東京大学。日本における最難関大の立場を確立している大学で、東大対策のコンテンツは大手予備校のものを中心に豊富に存在します。そのため、選択肢が多すぎて、東大入試を突破するために、本当に必要な取り組みが見えずらくなっているのが事実です。
この記事では、世の中に数多く存在する東大入試対策のコンテンツではなく、市販の標準レベルの参考書・問題集の知識で2019年の東大数学(理科)の問題が解けるかを検証していきます。
注意
このコンテンツに問題文と解答例は掲載していません。問題文と解答例が欲しい場合は、駿台予備校や河合塾等の大手予備校等のものを参照してください。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
使用教材
今回使用する教材は、入試の標準レベルの参考書としておすすめしている参考書・問題集セット(「国公立標準問題集 CanPass」の数学ⅠAⅡB、数学Ⅲ、「理系標準問題集」、「合格る計算」の数学ⅠAⅡB、数学Ⅲ)になります。
それぞれどのようなものか少し紹介すると、CanPass は標準レベルでも比較的取り組み易い問題が多いので、国公立志望者は基礎が固まったらまずやってほしい参考書です。次の理系標準問題集も標準レベルの参考書ですが、CanPass と比べるレベルが高いので、2冊目に使って標準レベルを固めるのに適しています。合格る計算は計算力強化用の演習書で、効率的な計算方法が掲載されたものになっています。
<合格る数学>
おすすめの計算問題集です。
効率的な計算手法が豊富に紹介されています。1周目は一度ざっと全体を見て、知らない手法が載っているところをやると良いでしょう。
2週目以降は、「毎日10分」や「土日に30分ずつ」など時間で区切って継続的にやると効果的です。
<国公立大標準問題集 CanPass>
旧帝大以外の国公立大の問題からなる標準レベルの問題集です。証明や図示などの記述問題も比較的多く収録されています。
解説が詳しく、標準よりも上のレベルの問題を解くための重要な考え方をしっかり学ぶことができます。
志望大学の難易度を問わず、国公立大志望者の標準レベル1冊目の問題集としておすすめです。
<理系標準問題集>
旧帝大や上位の国公立大学・私立大学の理系学部の問題が中心の標準レベルの問題集です。
CanPass と比べるとやや難しい問題まで扱っていて、ほとんどの問題が、上位の国公立大学の標準レベルに相当します。
CanPass 等で標準レベル以上の問題を解くための考え方をインプットしたうえでの演習用に使いましょう。
2019年の東大入試 数学(理科)の6題を検証
第1問
第1問は、なんと、積分の計算問題です。積の形をしていますが、部分積部や F(g)g' ではないので、展開して式を整理して積分することになります。一部、 x=tanθ と置換すると上手いくタイプが出てきますが、計算演習をきちんとやっておけばそれほど苦労なく解けるはずです。
「合格る計算数学Ⅲ」では、ITEM30 から 39 で積分計算の手法とその演習があります。x=tanθ と置換するの形は ITEM35 で詳しく扱っています。特にこの ITEM35 の演習に、本問に出てきた形とかなり似ているものが載っているので、しっかり計算演習を積んでいれば、難なく完答できるはずです。
検証結果
「合格る計算数学Ⅲ」に類題あり、計算演習をきちんと積んでいれば、標準レベルの参考書で完答可能!
第2問
第2問は図形量の最大値を考える問題ですが、変数を自分で設定する必要があります。変数を自分で設定して図形量を考える問題は「国公立標準問題集 CanPass」の数学Ⅲの大問 33(弘前大)の問題で扱っています。
とりあえず AP、AQ、DR をそれぞれ変数とおくと、二つの三角形とその残りの部分の面積着目して関係式を立式すれば、一変数の3次関数に帰着できます。関係式の立式やその式変形は、中学レベルでもできるので、学校で人並みに演習をしていれば大丈夫なはずです。
3次関数に帰着させた後は、変数の変域に注意して、微分して増減を考えればよいだけです。3つ変数をおいているため、変域を考えるのが面倒ですが、丁寧にミスなくやりましょう。図形量で、変数の範囲に注意しながら最大値・最小値を考える問題は「理系標準問題集」の大問 72(一橋大)の問題でも取り扱っていて、その問題でも、本問と同じく3次関数の形となっています。
検証結果
前半は「CanPass」に、後半以降は「理系標準問題集」に類題があり、これらが完璧なら迷わず解ける!
第3問
第3問は空間図形(空間ベクトル)の問題で、軸と垂直でない平面での断面を考える問題です。このタイプの問題は、標準レベルでは題材が四面体や直方体、円柱など考えやすい図形で出てくることが多い(例えば、「国公立標準問題集 CanPass」の数学Ⅲの大問 15(佐賀大))のですが、今回は八面体が題材で考えにくく、難問と言えます。標準レベルの参考書の内容で確実に解けるのは(1)だけです。
(1)は y 軸に垂直な面(y=0)での断面を考える問題なので、ここは解けます。軸と垂直な面での断面は、空間図形のみならず、立体の体積を求める積分の問題でもやっているはずです。(例えば、「理系標準問題集」の大問 135(東大)など)
(2)は、点 P が平面 α に関して、A、E と同じ側にあるか、B、C、D と同じ側にあるか、それとも平面 α 上にあるかで断面が変わることに気付けるかです。分野別のものを除き、入試の標準レベルの参考書では、図形的な考察を必要とする問題はあまり扱われません。空間把握力が高ければ、なんてことはありませんが、正直、標準レベルの参考書だけでは厳しいです。
(3)は一見するとかなりめんどくさそうですが、y≧0 と z≧0 と範囲が絞れているので、実はそれほど複雑にはなりません。ただし、(2)ができていないと解けないことと、一見するとかなり面倒そうなので、全受験生で考えても、解こうとした人自体が少なかったではないかと思います。
検証結果
(1)は解けるが、(2)以降は空間把握力がないと標準レベルの参考書のみの演習では厳しい。分野別の対策が必要。
第4問
第4問は整数問題です。(1)は最大公約数を求めるので、ユーグリッドの互除法を使いましょう。これは「国公立標準問題集 CanPass」の数学ⅠAⅡB の大問 1(山形大)で扱っています。ここは解けます。
問題は(2)です。考え方自体は標準レベルの参考書でも扱っているものですが、思考力が要求されるます。インプットのという視点では標準レベルで十分なのですが、正直、過去問等できちんと整数問題を演習していないと厳しいと思います。
結局、(n2+1)(5n2+9)が整数の2乗となるためには、n が偶数の時は、n2+1 と 5n2+9 がともに整数の2乗となることが必要です。n が奇数の時は、n2+1=2N、5n2+9=2M とかけて、N、M がともに整数の2乗となる必要があります。偶数の場合は n2+1 が整数の2乗にならないことはすぐに示せます。奇数の時は、M が整数の2乗ならば、M=m2 (m は整数)とかけ、m を5で割った余りで分類して考えていけば示せます。
余りで分類して考えていくとうまくいくタイプの問題は「国公立標準問題集 CanPass」の数学ⅠAⅡB の大問 2、3、4、「理系標準問題集」の大問 1、2、3 と何度も繰り返し扱っています。そこに帰着させることができれば、完答することができたでしょう。
検証結果
(1)は確実に解ける。(2)は考え方自体は標準レベルで扱ったもので完答できるが、現実的には過去等できちんと整数問題の演習を積んでいないと厳しい。
第5問
第5問は数列の極限の問題ですが、微分法との融合問題です。「理系標準問題集」の大問 100(北大)で題材となっている関数を変えただけの問題が掲載されています。なので、(3)の c 以外は全く同じ出題の流れで、考え方で解くことができます。
本問同様、理系標準問題集の類題では、(1)で方程式の解が1つであることの証明問題で、扱っている関数が基本的なものなので、グラフを使って答案をまとめています。本問で同じくグラフを使って答案を作る際は、解の存在する範囲が 0<x<1 であることを簡単に示して、この範囲で y=x2n-1 を微分し、単調に増加することを述べるとよいでしょう。
(2)は(1)で解の存在する範囲が 0<x<1 であることが分かっているので、すぐに証明できます。
(3)の a は不等式を作って「ハサミウチ」を考える問題で、これも理系標準問題集の類題と同じ出題で、同じ考え方で解けます。b は an2n-1 = cos an を ann =(an cos an)1/2 と冷静に変形できれば、a の値が使いえます。c は微分係数の定義の形が使えるように変形する必要があり、難問です。標準レベルの参考書だけでは厳しいでしょう。
検証結果
(3)の前半までは「理系標準問題集」に類題あり、題材が変わっただけで考え方は同じ。(3)の最後の極限値は難問。標準レベルでは、得点率 80%ぐらいまでいける。
第6問
第6問は複素数および複素数平面の問題です。使用する考え方は標準レベルの参考書に載っている内容ですが、題材が4次関数なので、面倒です。丁寧に検証できれば、時間はかかりますが、解ける問題です。
(1)は4次関数の複素数解に関するの問題です。方程式の複素数解の問題は、「国公立標準問題集 CanPass」の数学ⅠAⅡB の大問 28(岩手大)、「理系標準問題集」の大問 12(お茶の水女子大)で扱っていますが、ともに題材は3次関数です。CanPass の問題ででてきた、「実数係数の方程式が複素数解をもつとき、共役な複素数も解である」という考え方を使って場合分けを考え、それぞれで、与えられた条件が成り立つかを検証していけばよいでしょう。ここはそれほど時間はかからないはずです。
(2)は計算がきついです。4次方程式の解と係数の関係を係数比較からだし、関係式を出して(1)と同様に4解がどのような数となるか場合分けして考えます。それぞれのパターンで、関係式をうまく処理していけば答えにたどり着くので、難しい考え方はいりません。ただし、かなりの時間を要するので、ペース配分で注意が必要です。
(3)は複素数平面の軌跡の問題です。複素数平面の軌跡の問題は「国公立標準問題集 CanPass」の数学Ⅲ の大問 4(熊本大、鳥取大、埼玉大)や「理系標準問題集」の大問 140(九大)、141(愛媛大)で扱っています。(2)を解く過程で使用した式を上手く使えば難なく解答できます。
検証結果
考え方自体は標準レベルの知識で対応可能。ただし、様々なケースを丁寧に検証していく必要があり、演習慣れしていないと時間的にも厳しい。
検証まとめ
検証結果をまとめると次のようになります。標準レベルの参考書の内容で難なく解ける問題は〇、標準レベルの参考書の知識で解けるが、楽にはいかない問題が△、標準レベルの参考書の内容だけでは厳しい問題は×としています。
- 第1問:〇
- 第2問:〇
- 第3問:(1)〇、(2)×、(3)×
- 第4問:(1)〇、(2)△
- 第5問:(1)~(3)a まで〇、b △、c ×
- 第6問:(1)〇、(2)~(3)△
実際の2019年の東大入試では、理Ⅰ、理Ⅱの合格者平均で大体5割ちょっとになりそうなので、〇の問題だけなら、合格者平均になんとか届くかどうか、△まで含めると余裕をもって到達します。
結論
今回は、2019年の東大入試の数学(理科)の大問6題を標準レベルの参考書の内容で解くことができるかを検証していきました。結果、標準レベルの参考書を完璧にできれば、理Ⅰや理Ⅱの合格点までは到達できます。ただし、時間内に答案をまとめ減点されない答案を作成する必要があるので、答案の作成の訓練を徹底的に積むべきでしょう。
<合格る計算>
第1問の類題も掲載!
東大で頻出の求積問題攻略のための計算力養成やセンター対策に!
<国公立大標準問題集 CanPass>
標準レベル以上の問題を解くための考え方が満載!
第2問、第4問、第6問で使う考え方も収録!
<理系標準問題集>
収録されている問題から、第5問はズバリ的中!!
上位の国公立大・難関私大の標準レベルが中心の問題集で実力をつけろ!